第43章


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 ――彼女の心配通り、ゾロアークとの不和はそれは長い間続いた。
最も直接取っ組み合う様な事は一度も無く、ばったり鉢合わせても彼の方から俺を避けていき、
仕方なく同じ場に居合わせざるを得ない時に監視するような険しい視線を向けられるぐらいだった。
俺自身は別段、もうゾロアークに対して反感や敵意を抱いてはいなかった。
睨まれるのはあまり気分がいいものじゃないが、番人として俺の経歴は危険視して当然だ。
そして今思えば、ゾロアーク自身としても一生消えない傷と後遺症を負わせてしまった負い目や、
大事な弟分や妹分達との間に急に割り込んできた俺という存在には色々と複雑な思いが入り混じって、
そうそう易々と受け入れるわけにはいかなかったんだろう――。

〈それじゃあ、今日はお疲れ様でした。おやすみなさい〉
”ああ。おやすみ”
 彼女と別れて、自室に帰り着くと俺はベッドに転がって己の身の振り方について思案した。
多少なりとも体が動かせるようになった以上、何もせずにだらだらと過ごすわけにはいかない。
だが、自分に出来るような事は一体何があるだろうか。考えてみても何も浮かばなかった。
本当に戦いだけの人生だったんだなと改めて思い知った。だが、今はそれすらも残っていない。
そこでふとまた部隊の事を考えそうになり、俺は慌てて思考を切り上げた。
自分だけで悩んでも悪い方向に思考が傾くばかりで埒が明かない。明日にでも彼女に相談しようと、
その日は逃げるように意識を眠りの奥底へと沈め込んだ。



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