第43章


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 夕食会も終わり、子ども達との交流もほどほどに済ませて俺は彼女と共に自室への帰路についた。
〈途中ひやひやした場面もありましたけれど、バッチリ好感触でしたね〉
 えらいえらい、花丸あげちゃいます、なんて冗談ぽく子どもを褒めるみたいに言う彼女に、
”なあに、鬼教官殿のおかげさ”と俺もわざと皮肉めいて返す。
〈あ! その態度、かわいくないですよー!〉
 頬をむくれさせる彼女に、俺はくすくすと笑った。
〈もー……。まあ、それはともかくとして、咄嗟の事とは言え記憶喪失だなんて
変な嘘をつかせてしまってすみません〉
”いや、構わないよ。どう答えたらいいものか参っていたし、助かった”
〈後で子ども達にはあまりひとに立ち入ったことを聞いて困らせちゃいけないって、
ちゃんと言って聞かせなきゃ。それともう一つ、ゾロアークのことについても
あなたに謝っておかないといけません〉
”別に、君が謝ることでもないだろう”
 気にするなと言う俺に、彼女は首を横に振るった。
〈いえ、こんな事になってしまっているのは私の責任でもありますから。
今日のあなたと他のみんなの様子を見て、あなたに村をおびやかすような危険は無いって
いい加減分かってくれたらいいんですけれど、へそ曲がりだからまだまだ時間がかかりそう……。
困ったお兄ちゃんです、本当に〉
 はあ、と彼女は尻尾をしょんぼり垂れ下げた。

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