第43章


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 安心も束の間、何か言いたげなな視線でこちらを睨むゾロアークに俺は気付いた。
『どしたの? そういや、シスターねーちゃんがこのケガしたにーちゃん慌ててつれてきた時、
ゾロアークにーちゃんも一緒だったんだろ? こんなひどいことしたヤツが誰か、見なかった?』
 様子に気付いた黄色いトカゲの子が、急に顎下から殴り上げるようなまたしても手痛い質問を
ゾロアークへとぶつけた。思わぬ飛び火にゾロアークの毛並みがぎょっと逆立つ。
『み、見てない。何も知らない』
 どぎまぎとゾロアークはしらばくれた。子ども達の前で、それも”ひどいことしたヤツ”と
非難された上で、よもやそれが自分の仕業とはとても言えなかったのだろう。
『ふーん、そっかー』と一応の理解を得、ゾロアークは安堵したようにそそくさと食事に戻った。
 立場は違えど、同じように子どもにいいように追い詰められている姿に、
何だか俺はおかしくなってフッと笑いを零す。ゾロアークはばつが悪そうに俺を横目で睨んだ。
〈それより、みんな。あれこれいろいろ尋ねるよりもまずしなきゃいけないことがあるでしょ?
 ちゃんと自己紹介しないと失礼よ〉
 彼女に諭され、そうだったと子ども達は顔を見合わせた。

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