第43章


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 日が少し傾きかけた頃、俺と彼女は教会へと帰り着いた。
〈いけない、ちょっと遅くなっちゃったわ〉
”俺に合わせたせいで、すまないな”
〈ううん、元はと言えば私があまり遠くまで連れ出しちゃったせいですもの。
大丈夫、偶の寝坊で大急ぎで用意するのは慣れてますから――自慢できることじゃないけれど……
時間までにパパッと仕上げちゃいます、お任せあれ!〉
 はりきった様子で拳を握り尻尾と耳をピンと立てて見せる彼女の傍ら、何の事かと俺は首を傾げた。
〈何って、お夕飯に決まってるでしょ〉
”えっ! まさか、ここの食事はいつも君が作っていたのか?”
 家事の手伝いをやっていると以前に聞いてはいたが、まさか料理まで賄っているとは知らず、
俺は驚いて聞き返す。今日の弁当だって、てっきり牧師――それもちょっと意外な気もするが――
が拵えた物だと思っていたのだ。
〈あら、言ってませんでしたっけ? とは言っても、ポケモンの子達の分だけですけれどね。
人間の子達と牧師様の分はいつもお手伝いに来てくれている村の女性が賄ってくれていますわ。
私も衛生面には十二分に気を使ってますが、悲しいかな私だって一応はネズミの端くれ、
もしも万が一があったら大変なので……〉
 少ししょんぼりとして彼女は答えた。
 なるほど、と俺は頷きながら、そういえばニューラやバリヤードがシェフをやっているレストランが
どこぞにあると風の噂程度に聞いたことがあるのをふと思い出した。スカーのツラを思い浮かべると、
奴が作ったものを食らうぐらいならその辺の雑草でも貪った方がマシなのではないかと思ってしまうが、
努力の方向しだいでポケモンであってもシェフが勤まるとは、戦うだけが俺達の能じゃない、か。


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