第43章


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”ふうむ……”
 彼女の説明に耳を傾けつつも、俺はいまだにその全体像に対して何となく収まりの悪さというか
何かが欠如しているような違和感がして、ステンドグラスを眺め続けていた。
〈あの、どうかしましたか?〉
”いや、何というのだろうな、ここに描かれているものには何かが足りないような気がするのさ。
底辺の角二つにはその御使いとかいう者達が描かれているのに、頂角にだけ何も無いというのは
どうにもバランスが悪い気がしてな。あの頂角の部分だけ妙に隙間があるというか。
中心の円も不自然に頂角側がもう一つ円が入り込みそうな具合に欠けている”
 心配そうに俺の顔を覗きこむ彼女に、俺はステンドグラスに抱いている違和感について話した。
〈やっぱり気になります? 牧師様に聞いたのですが、あの位置には本来、
ディアルガ様、パルキア様、御二柱と同時期に産み出されたとされる、影または反物質を司り、
この世の裏側から時空を安定させているといわれるギラティナ様という御使いの御姿が描かれ、
大昔はパルキア様やディアルガ様と変わらないぐらいに厚く信仰されていたそうです。
ですが、どこかの偉い誰かがいつからか、私達この世に生きる者達は本来は命尽きない不死の身として
アルセウス様に創造された所を、ギラティナ様に死という概念を植え付けられてしまい
定命となってしまったんだーだなんて唱え出して、この世の裏側に潜んでいるのは、
そうして亡くなった方々の魂を引きずり込んで喰らうためだー、神を裏切って逃げ込んだんだー、
だなんてあれやこれや散々に悪者扱いされて、瞬く間にその座を堕ろされてしまった――。
この話を聞いた時、何だか身勝手で酷い話だわって思ったの。神様達なんて目には見えないから、
本当にそんなことしたかなんて誰にも分からない筈なのに、急に勝手に悪者だと決め付けた上に、
手の平を返すみたいに態度を変えちゃって……〉



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