第43章


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 根負けして諦めたように俺はそう答えた。
〈お任せください、決して悪いようにはしませんわ〉
 彼女は表情を太陽みたいにパッと晴らして嬉しそうに微笑んだ。

 それから俺は彼女の言うことをきちんと守って、まずはしっかりと療養に努めた。
ろくに口もつけていなかった食事をしっかりと取り、例の悪夢に苛まれ寝付けない時は
彼女がいつも傍で宥めてくれた。やがて包帯を外していても大丈夫になった頃、
少しずつ歩けるように訓練を始めた。初めは室内だけで壁伝いに、時に彼女に手を引かれ、
ゆっくりゆっくり一歩一歩踏み出した。時折襲ってくる激しい痛みや、
自在に地を駆け跳んでいた体が赤子のように自由が利かなくなっていることへの焦燥と屈辱感、
情けなさに何度も心が折れてしまいそうになったが、牧師の暖かく見守る目や、
彼女の優しい励まし――時々、叱咤――にその都度奮い立たされた。
 そうして挫けず地道に続けている内、壁に手をつかなくとも、誰の補助を受けなくとも、
極めて頼りなくはあるが己の二足で数歩歩めるようになった。その時の二人といったら、
まるで自分の事のような喜びようで、彼女はぐすぐすと感極まった様子で涙を滲ませ、
牧師からはやんやと拍手喝采を送られた。当の俺は、それにどう応えたらいいか分からなくて、
何ともいえない表情をしていたかもしれない。



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