第39章


[69]


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「見たでしょう、ギラティナ。我らにすら止められなかった崩壊の危機を、元はただのピカチュウが三度。生死さえ越えて防いだ……」
 身を地に横たえたままパルキアは大樹を見上げ、みしみしと軋みながらかすれた声を漏らす。
「最早我らの差し出す手など必要ない。世界はもう立派に一人で立ち上がり、自らの足で歩んでいる」
 白金の影は枝の上の二匹を見やり、何も答えずただ静かに揺らめいた。

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 ひとしきり再会を喜び合った後、俺は下に倒れているパルキアとギラティナの姿を見つけ、アブソルと顔を見合わせて頷いた。不安を浮かべるアブソルを、「大丈夫だ」と撫で、共に大樹を下りる。

「良くぞご無事で」
 駆け寄る俺達に、パルキアはふらふらと起き上がり、首を下げ跪く。
 ギラティナは深く目を閉じ、判決を待つ罪人の如く全てを諦めたようにじっと佇んでいた。
アブソルはそれを憂いを帯びた複雑な面持ちで見つめる。
「貴様らの勝ちだ。最早私に目的を果たす力は残されておらぬ。どのような罰であろうと受けよう」

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