第39章


[63]


 ざわ、と胸の奥が揺らいだ。
“帝王”。磐石不動、絶頂の存在。何者にも何事にも退かず、媚びず、省みない。
最上、至高、並ぶもの無き万物の頂点ッ!
 くく、ふふふ……巧く乗せてくれるではないか。
『ああ、君を乗せるのなんて昔から慣れたもんさ』
 そうだろう、そうだろうともさ。全く以って心地よく懐かしい響きよ。
見るがいい。見せてやろう、我が成長した姿を!

 一段と強い脈動。高ぶり唸る金の輪に意識の手を通せば、硬く細い芯が指の先端から貫き入り、腕を通り、体へと伸び広がっていく。
やがて全身に行き渡った芯の上を、今度は生温かい布状のものが覆い包んでいった。
 同時に味わう、全身傷だらけで塩水に放り込まれたような痺れ、熱、到底言い表せぬ痛み。
しかし、後退はなし。前進あるのみ。この程度、己の苦痛を制せず何が帝王、どうして生死の道理の逆を行けようか。
 苦しみを耐え、千切れそうなまでに引き絞っていた全身に更に渾身の力を加え、耳から尾の先までを包み終えた瞬間、
「――ぅおおおおおッ!」
 息を吹き返した喉が、体の奥底から雷鳴の如く雄叫びを打ち上げた。
持て余した青い電気の帯が、ばちばちと黄色い体毛の上を舞い踊る。
「ふは、ふはははは!取り戻したぞ、我が肉体!」


[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.