†*†*†*†*†*†*†*†*

《完結》負けない!!負け犬【１】～２０代後半・真選組女子隊長の日記～

†*†*†*†*†*†*†*†*

[66]１０月２５日

†*†*†*†*†*†*†*†*
入籍して一週間が経った。

しかし私の勤務状況に変わりはなく、シフトも今まで通りに組まれている。

今夜は結婚後初めての夜勤だ。

朝、家を出る際、神楽ちゃんが玄関までお見送りしてくれ、

｢行ってらっしゃいネ。

華蓮ちゃんがお仕事してる間に銀ちゃんが浮気したりしないように、私がよ～～～く見張っとくアルよ。｣

と言って手を振った。

神楽ちゃんは同居人であり、私の妹であり、大事な娘でもある。

周りではコブ付き？との結婚を懸念する声もあったが、実際に一緒に暮らしてみてもさほど不自由さは感じられない。

彼女はあー見えて意外にオトナで、私達夫婦の生活に水を差したりはしない。

お互い適度な間隔を保ちつつ、安定した暮らしを送れるのは、案外彼女の気遣いのお陰かもしれない。

ありがたい事だ。

｢定春ゥ～、華蓮ちゃんのお仕事の時間アルよ～。｣

｢アンッッ!!｣

毎日出勤の際には定春が私を屯所まで送ってくれるようになった。

白くてふわふわの背中は、屯所前で降りてしまうのが億劫になるほど気持ち良い。

今日もそんな定春の背中にまたがり、仕事に向かう。

｢あっ坂田隊長、おはようございます！｣

始めは巨大な犬に乗って出勤する姿に驚いていた門番達も、もう毎日の事なので馴れてきたようだ。

｢さて今日も頑張ってくるからね。

気を付けて帰るのよ。｣

｢ウワンッ♪｣

鞄からご褒美のジャーキーを取り出し、鼻の前に差し出してやると、定春は嬉しそうにそれをくわえて家路についた。

・―・―・―・―・―・

今日も四人の女子隊士を従えて、夜のかぶき町歓楽街を歩く。

入隊した頃はこの街の異様さにビクビクと怯えながら見廻っていた彼女らも、今では威風堂々と肩で風をきって練り歩く程に成長した。

しかしまだまだ瞬時の状況判断や力量といった部分に問題が残る。

出来るだけ早くその点を改善したいと、このところ特に思うようになった。

早いとこ女子隊長の席を誰かに譲り、私は子供を作りたいのだ。

その為には安心して託せる人材を作らねばならない。

今、私の中で候補に挙がっているのは、ダントツで京子だ。

２４歳と年齢的にも適齢だし、頭もキレるし行動力もある。

案外この娘の方が、私より女子隊長に向いてる気がする。

｢助けて！華蓮さん!!｣

来た。

今夜の依頼だ。

｢ヤクザが、嫌がるうちの店の娘達に無理矢理沢山強いお酒ばかり飲ませてるのよ。｣

なるほど。

おそらくライバル店が寄越した刺客だな。

酒で全員を潰して『この店は客のニーズに応えられない』とレッテルを貼って逃げる…というパターンだ。

店内では、既に潰されたキャバ嬢がソファーのあちこちでグッタリしている。

そして最後に残された若い女の子が、テーブルいっぱいに並ぶ小さなグラスに注がれたテキーラを眺めて、ガクガクと震えて泣いている。

確かあの娘は、この間十九歳になったばかりのはずだ。

｢おら、飲めや。
高いテキーラこんだけ注文したったんやぞ、コルァ。｣

｢ありがたく全部イッキ飲みせぇや!!｣

ヤクザの罵声が飛び交う。

若いキャバ嬢は意を決し、テキーラグラスを手に取った。

その瞬間、私は彼女からグラスを奪い、テキーラをイッキ飲みした。

その勢いでテーブルの上のグラスをどんどん口に運び、全て飲み干した。

ヤクザもママもキャバ嬢もボーイも女子隊士も…みんな口を開けて唖然としている。

｢未成年者に飲酒を勧めた罪で逮捕する。｣

私はヤクザのリーダー格の腕を取った。

｢『新婚さんいらっしゃ～い』っていう番組知ってる？

あれって最後に神経衰弱やるんだよね。

パネルをこーんなふうに裏返してね…。｣

ヤクザの腕をひねりあげた。

｢ヒッ…!!｣

ヤクザはさっきとは打って代わって情けない声を出した。

｢で、同じ商品が出ると、それをゲット出来るわけ。｣

ガシャリと手錠を掛けた。

｢さらにゲットした商品がタワシだったら、海外旅行まで行けちゃうんだよね～。｣

♪ファンファンファン…

女子隊士が呼んでいたパトカーが到着した。

｢まぁ、アンタ達は海外じゃなくて拘置所に行けちゃうみたいだけど。｣

ヤクザのリーダーと、女子隊士が捕獲した共犯者をパトカーに放り込んで一段落したので、私達も屯所へ帰る事にした。

さて

明日はYES･No枕でも買って家に帰るか。

†*†*†*†*†*†*†*†*
[前㌻] [次㌻] ［*］ﾎﾞﾀﾝで前㌻
［#］ﾎﾞﾀﾝで次㌻ †*†*†*†*†*†*†*†*
[←戻る] †*†*†*†*†*†*†*†*
†*†*†*†*†*†*†*†*