第41章


[98] 


 きょとんとしてあっしらのやり取りを眺めている子ニューラに、マフラー野郎はにこやかに振り返る。
「分かったよ。君をエンジュシティまで連れて行ってあげよう」
「ホントか? でも……」
 一瞬、子ニューラは笑顔を浮かべそうになったが、すぐにそれを沈めてあっしに非難じみた目を向けた。
「大丈夫、ヤミカラスも行ってもいいってさ。もしも本当にまた蜘蛛達が出てきても、俺が守るから平気だ。
後は、ニャルマーだけど……」
 言いながら、マフラー野郎はニャルマーの方を見やった。ニャルマーは背を向けたまま、
不機嫌そうに尻尾をぱたぱたと左右に振るう。もうどうにでもしろと無言の投げやりな返答に思えた。
「……一応、妥協してくれそうだ。というわけで、出発しようか」
 マフラー野郎が手を差し伸べる。子ニューラはパッと表情を晴らしてその手をとった。
「うん! やっぱりおまえって、いいヤツだな! そーだ、じこしょーかいがまだだった。オレ、ニューラ。
おまえはオレのことニューラって呼び捨てにしていーぞ。特別だかんなー」
 繋いだ手をぶんぶんと嬉しそうに振るいながら子ニューラは言った。
「はは、それは光栄だ。よろしく、ニューラ。俺の名はピ――」
「ひゃは、よろしくなー、ネズミー!」
 マフラー野郎も名乗ろうとするが、そんな事はお構いなしに感極まった様子の子ニューラに
飛びつくように抱きつかれて遮られる。
「……まあ、いいか」
 苦笑してマフラー野郎は頬を掻いた。

[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.