第41章


[108]


 沈んだ様子で経緯を話すオオタチを余所に、マニューラは土埃を払いながら腰を上げた。
「そりゃ大変なこったな。ま、精々気をつけて行ってきなよ」
 冷たくあしらうようにマニューラは言い、さっさと一匹で逃げるようにその場から立ち去ろうとする。
「ちょっと、待ってください」
 その背をロズレイドは慌てて追いかけて引き止めた。マニューラは小うるさそうに眉間を顰め、
肩越しに振り返る。
「なんだよ」
「このままあの親子を置いていってしまうんですか?」
「当たり前だろ。これ以上なにお節介焼こうってんだ」
「乗りかかった船ですし、せめて三十九番道路付近までは送り届けてあげませんか」
 真顔で提案するロズレイドの額を、マニューラは爪でこつんと小突いた。
「あのなあ、こちとら人助けのためにジョウトを行脚してるわけじゃねーんだよ。
あの蜘蛛共から逃がしてやっただけでも、ぶっ倒れちまいそうな程の出血大サービスだ」
「でも、またあの蜘蛛達に襲われないとも限りませんし、放って置けませんよ」
 ロズレイドは不安げにしているオオタチ親子にそっと振り返る。ふう、とマニューラは溜め息をついた。
「だったら、オメーだけで行ってくりゃいいだろうが。元々、オメーは勝手についてきやがったんだ。
別に引き止めはしねーさ」
「そういうわけにもいきません。マニューラさんのことも心配です」
「オメーに心配されるほど、オレは落ちぶれたってか? 生意気言ってんじゃねーぞ」
 マニューラはロズレイドの胸倉を取り、ぐいと睨みつける。

[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.