第41章


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「よし。まずは俺から行くけど、次のお嬢さんはその長い尻尾がうっかり引っ掛からないように気をつけてくれよ」
「分かってるよ。アンタこそガキを背負ったままで大丈夫なのかい?」
 長い尾をくるりと自分の胴に巻き付けながら、ニャルマーは問い返した。マフラー野郎は首を捻って背を確認する。
チビ助はまたあいつの背ですやすやと寝入っているようだ。
「大人しくくっ付いて寝ているみたいだし大丈夫さ。無理に起こすと機嫌悪くしてわがままになるから反って大変だよ。
その次はヤミカラスだけど……そのギザギザした帽子みたいな頭の羽毛、もう少し潰すかして低くした方がいいかな」
「はあ!? おいおい、ふざけんじゃねえ。これをビシッとキメるのに、毎朝どれだけかかってると思ってやがんだ。
この髪型は俺様のポリシーだ、絶対に嫌だね!」
 あっしは頭の羽毛を庇う様に覆い、首を横に振った。幾らなんでも、これだけは受け入れるわけにはいかねえ。
「ああ、もう、ぐだぐだうるさいね。アンタのムサ苦しい頭なんて、誰も大して気にして見ちゃいないよ!」
 苛々した様子でニャルマーはあっしは押さえつける。
「な、何しやがる! や、やめろー! ――」
 じたばたと抵抗するもむなしく、あの性悪猫はあっしの頭に前足を押し付けてぐりぐりと踏み躙った。
 ようやく放された時には、あわれあっしの自慢の髪型は、使い古したホウキの先みたいにみすぼらしく
ぐしゃぐしゃに潰されていた。
「ハハハ、そっちの方がオトコマエじゃないのさ」
 げらげらとニャルマーが笑う。その後ろで、マフラー野郎も堪えきれなさそうにくすくすと笑っていた。
「ち、ちくしょう……てめえら、覚えとけよ……」
 こいつら、無事に脱出出来たら、後で絶対に何か仕返ししてやる。あっしは心に深く誓った。



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