第39章


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「遠慮なさらず。腹が減っては何とやら。あなたにも大役があるのですから」
「む……」
 葛藤はあったが、誘惑には勝てずに木の実の一つを取って、噛り付いた。
 ――美味い。皮は硬いが、中身はクリームのように甘く、とろけるようだ。
 目が覚めたようになって思わず残りも全てもぎ取り、両手一杯に抱える。
「おや、小さな体で、随分とお食べになるのですね」
「違う。もう一匹、俺以上に腹を空かせている奴が居るはず。俺はもう十分だ、いち早く向かってやってくれ」
 待っていろ、アブソル。実を全て道具袋に押し込み、気を引き締めた。
「……そうですね。想いが無駄にならぬうちに――いざ」
 空間を裂き、異空間に入ると、ギラティナの下へ至る黒く封ぜられた入り口を呼び寄せる。
咆哮と共に両肩に埋まる結晶が強く輝き、薄桃色の光が全身を護るように包むと、勢いをつけ、迷いも無く闇の口へと飛び込んだ。
 

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