第41章


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「んなッ!?」
 あまりにも身の程を知らないマフラー野郎の言葉に、あっしは声を上げて動揺する。
「大丈夫だって。確かにあいつは全身筋肉まみれで一見強そうに見えるけれど、動きはそんなに速くない。
君ならうまくやれるさ。自信を持つんだ、ヤミカラス」
「そっちじゃねえよ! いや、まあ、そっちも不安にゃ違いねえが――。おめえ、自分が巨大なドラゴンや
猛獣ポケモンだとでも勘違いしてんのか? そんなものとは月より程遠いちっぽけなネズミだぞ、ネ・ズ・ミ!
あんな倍以上も体が大きな、それも火を吹く猛犬、俺様達三匹がかりで挑んでも勝てるかわかんねえのに、
無謀だ無謀!」
 首元のマフラーを掴みあげてぶんぶんと揺さぶりながら、あっしは捲くし立てた。背中のチビが
小うるさそうに目をこすりながら、おんぶ紐代わりに身を包むマフラーの中から顔を覗かせる。
どうしようもない危機だってのに、呑気に居眠りなんてしていやがったたようだ。
「なんだ、俺の心配をしてくれていたのか。それなら尚更心配ご無用。あのくらいどうってことないよ。
火を吹くなんて珍しいことじゃないし、体格だって世界にはもっとずっと大きくて頑強な奴らがいる」
 ちっちっちっ、と指を振り、マフラー野郎は不敵に笑った。背中のチビはジトりとヘルガー達を見回してから、
慌てふためくあっしを見やって呆れた様に鼻で息をし、またマフラーに潜り込んで夢の続きを見始めた。
『この程度で騒ぐな、うるさいカラスめ』心の中で、そんな風に小馬鹿にしてやがったに違いねえ。
 こいつら、親子揃って途方もない大馬鹿か、針金のように図太い神経をしていやがる。
あっしは絶句して、わなわなと嘴を震わせた。

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