第39章


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 ・

「協力は出来ぬ、と?」
 目覚めたディアルガに、パルキアはギラティナの暴走を伝え、助力を求めた。
しかし、ディアルガの答えは否定的なものだった。
時は、如何なるものにも左右されず、乱れることなく平等に流れ続ける。
己はどちらにも深く与する気はないと、ディアルガは告げた。

「日和見主義者に成り果てますか、ディアルガ。もういい、あなた自身の協力は期待しない。だが、せめて、あなたの護る宝玉を、我が力の源を渡せ」
 沈黙するディアルガに、パルキアが苦々しく吐き捨る。
「主の望みは尊重して然るべきだ。だが、それ以上に我らの手を無くした世界はどう歩むのか、懸念を拭うことはできないのもまた事実。お前は何を信じる?」
 ディアルガの問いに、パルキアはにやりと口端を歪ませ、俺を手の内から放る。

 ――俺を、手から放る?
「なっ!?」
 あまりに唐突に放り捨てられ、俺は為すすべなく素っ頓狂な声を上げる。直後、ぐえ、と喉が押され、絞まる感覚。パルキアが俺のマントの裾を摘まみ、宙に吊り上げたようだ。
『何をする!』文句を言う間も無く、俺は宙吊りのままディアルガの眼前に向き合わせられた。

「……また“これ”か」
 極々他愛の無いものを見る目付きで、ディアルガは俺を見やる。
「ふ、ふん、“これ”とは何だ。寝ぼけて忘れたか、俺はピカチュウ。お前の主の友であり、いずれ世界を統べる者だ」
 俺は腕を組んで踏ん反り返り、睨み返した。
 暫くの睨み合いの後、やがてディアルガは俺の気迫に観念したのか――馬鹿馬鹿しそうにも見えたのは気のせいだろう
――重々しく息をついた。突風のような吐息に煽られ、宙吊りの俺の体は激ぶらんぶらんと激しく揺られる。
「主も、お前も、何故この様なものに入れ込むのか……理解不能だ。よかろう、パルキア。宝玉は渡そう。
こんな子鼠の助力だけでギラティナを止められるのならば、世界は本当に我らの管理など最早必要としていないのだろう」
 

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