第39章


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「ギラティナさんは、ずっとここに居るの?」
「ああ。殆どこの場を離れることはできぬ」
「え、どうして!?」
 誰かの住処にとやかく言うのも失礼とはアブソルは思ったが、こんな暗い場所にずっと独りで居るなんて、辛いに決まっている。かつて、ピカチュウに助けられる前、自分もそうだったように。

「私には役目がある。世界を維持するとても重要な役目なのだ」
「誰とも交代もしないの……?」
「代わりなどいない。永劫に近い時を、私は――む?」
 言いかけて、ギラティナはアブソルの瞳がうるうると滲んでいる事に気づく。
「どうした、まだ私のこの姿が恐ろしいか?ううむ、だが今更仮の姿をとるのは――」
 泣く子には神でも勝てず、たじろぐばかりのギラティナに、アブソルはぶんぶんと首を振るった。
「違う、違うよ。だって……だって、ギラティナさん、かわいそう……」
「かわい、そう?」
 理解の範疇を超えた予想だにせぬ言葉に、ギラティナはぎくしゃくと首を傾げる。


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