第40章


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「じょ、冗談じゃねえや。もう好きにしてくれ」
「おお、そーか。悪いねー」
 口では言いつつも、全く悪気の感じられない態度でからからとマニューラは笑う。
 報告に帰ったらドンの野郎になんてどやされるやら、フローゼルはぶつぶつと呟いて、もう一度心底疲れきった息をついた。
「なーに、シンオウにはちゃんとオレの代役を置いてきた。黙ってればしばらくは大丈夫さ、たぶんな」
 代役? あの妙な違和感のあったマニューラか? 首を捻る俺をよそに、ロズレイドが合点が言ったように「ああ」と呟く。
怪訝に思って見やると、「いえ、なんでも」と手をひらひらと振るった。……何なのだ、一体?

――
 
「それで、マニューラのヤツはどうしてやがった」
「うん、とりあえず二階でニューラ達と大人しくしているみたいだ。何だかぼーっとしてて喋らないし、
ちょっと様子がおかしい気もするが……」
 エンペルトの報告に、ドンカラスはばりばりと頭を掻いた。
 ――まあ、塞ぎ込んでも無理もねえか……。あっしだって本当は、すぐにでも飛び出して直接カントーに
自分の目ではっきりと真偽を確かめに行きてえ。だが、ヤミカラス達を捨て置くことは出来ねえし、
あいつにだってニューラ達がいる。もしも、最悪の真実がそこにあっても、
もう己の身を省みずに突っ走ることなんて出来ねえんだ。なら、いっそのこと確かめねえまま、
知らねえままの方がいいってことだってある……。
「どうしたんだ?」
 押し黙ったままのドンカラスを不審に思い、エンペルトは声を掛ける。
「――ん。ああ、いや、ならいいんでえ。今日はあっしの奢りで、あいつらに好きなだけ飲み食いさせてやりなせえ」
「……分かった、言っておくよ」

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